体温競技会

風邪をひいている人が必要に迫られて体温計を使っているのを見ると、
なぜか、決して熱っぽいわけでもないのに自分も熱を計りたくなる。
計って、当然平熱であることを確認して、すこしがっかりする。
そして、それは周囲の人間にも伝播し、突然、体温測定会が始まる。
人は数値化を好み、そして数値化は競争を呼ぶ。
平熱の人間の中から、平熱の高い順位が決まってゆくことになり、
高い人間は暫定高平熱王者となるのだが、
その栄光は平熱が低い者の体質相談から発展する
血圧などの健康談義の波間に、瞬く間に埋もれることとなる。
王者はやや憤りを感じるが、平熱で勝ち取った栄光だけに熱くなるわけにもいかない。

しかし、本当に心外なのは、
傍らで熱っぽい体でぐったりしながら、
その盛り上がりを眺めている高熱者であることは、
気づかれないことが意外に多い。
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