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キッカケのキューピッド

E0886

これは、あまりにベタすぎて、
ネタかと思われるほどの実話である。

【起】
口角に微笑をたたえ、それから発生する目元の緩みが生み出す
穏やかな表情。

前髪をおろし、後ろはキッチリとアップにしてあるヘアースタイル。

ぐちゃぐちゃの足元で、汚れる危険性を承知しながら、
敢えてチョイスされた白いコート。

なにより、
ツメ磨きに忙しいオバちゃん相手にも、
(ちょっとごめんなさい…)
としながら気づかれず、
しかたなく静々とよける仕草から醸されるたおやかさ。

どれをとっても私の琴線を爪弾(つまび)かせしめるナイスな女性だった。
 
 
 
ちなみに、
好みの条件が相方とあまり合致していないのではないかという
ご意見が予想されるが、
好みのタイプと好きになる女性が必ずしも一致しないのは、
世に舞い降りたステキな矛盾というものであり、
誰しも多少、心当たりのあるところではないだろうか。

【承】
車床に転がったペンを、
私と隣にいた二人組みのオバチャンが同時に気づいた。

「あらあ!」

と声を上げたオバチャンを横耳に、
風を切ってペンに手を伸ばす私。

ペンは、可愛さのカケラもない実用的なもので、
私もその書き味を認める一品だったため、
高感度さらにアップ。

【転】
ナンパなどはしたことがないが、
見知らぬ人に声をかけるのはニガテではない。

しかし、
こんな出来すぎたイベントはさすがに初めてだったので、
緊張というか、眉間から鼻にツンと抜けるような、
薫りたつトキメキを禁じえなかった。

【結】
幸いにも、すぐに気づいてくれた彼女が、
驚きの顔から溶けるように微笑み、

「わあ。ありがとうございます~。」

と言ってくれた。

ちょっと鼻にかかったような、
決して高くはない声が心地よい。
 
 
 
キッカケのキューピッドは、
その矢をボールペンというカタチに変えて、
私と彼女を近づけた。

どうする!?
どうすんのよ!?
オレ!!!?
 
つづ~く~!


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