全力少年

先日のこと。
自転車で走る少年の姿が目に止まった。
その少年は、自分の体格にまったく見合わない自転車に乗っていた。
肩を怒らせてハンドルにしがみつき、体を全体をピストンのように上下させている。
それは、座ったままペダルをこぐことができないので、サドルの前の空間にめり込むように立ちこぎをしているからだ。
十分にペダルを踏みしめ、ある程度勢いがつくと、ちょこんとサドルにすわって休む。
つかの間休むと、またきっこきっことピストン運動を始めた。
体は上下に動いているのに、自転車はわずかに蛇行している。
危なっかしいが、見ていて懐かしい。
ちょうどいいものばかりの近頃。
次々に塗りつぶされてゆくちょっとした不便のスキマをこいでいるような少年の姿に、塗りつぶしきれない不便の痛快さを感じたのだった。
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