物事というものは、えてしてそういうものであるように、色々なものが寄り集まって大挙してくる。
良しにつけ悪しきにつけそういうものなのかもしれない。
先日のこと。
対処しきれないような「大挙」とまではいかなかったものの、「プチ大挙」と言えるような日々があった。
それは一通のメールから始まった。
「はじめまして。私は東京の広告代理店、制作部に勤めているN田と申します。いつもブログを楽しみに見させていただいております。今度、取引先の旅行会社で使う小冊子を作るのですが、その冊子のなかのイラストを寿さんにお願いしたいのです。いかがでしょうか?」
もちろん、実際の文面は丁寧で誠実なものでした。
丸写しするわけにはいきませんので、要約するとこういう話だった。
当然のように二つ返事、いや、二十四つ返事くらいで請け負う旨を記したメールを返信する私。
すると、数時間後にまたメールが入る。
「ありがとうございます!今回の依頼主は…
驚倒。
●●●●社といえば、全国的に有名な旅行会社ではありませんか。
狼狽というよりも、喜悦による武者震いを覚えた。
面白ろすぎる!
仕事の内容はこうである。
冊子内の文章を具体的に想起させるようなイラストを描く。
カット数は十数点。
制作期間は4日。
メールによる数回の打ち合わせののち、その冊子のモデルと指示書が送られてきた。
指示書にはこう書かれている。
「絵にせりふがあってもなくてもいいです。寿様の感性に委ねます。」
<./center>
しかし、いつもありがたいなと思うのは、絵の仕事を下さる方々は皆さん私の絵柄を尊重してくださるということ。
そして、依頼主はかなりデカイところが多い。
駆け出しのイラストレーターとしては、本当に恵まれているなと思う。
そんな感謝を噛み締めつつ、制作を開始しただった。
冊子まるごとイラストおまかせということで、十数点。
4日で仕上げるとなると結構大変かもしれない。
今までそういう仕事はしていないのでなんともいえないが、いつもの「言戯イラスト」レベルでも、一枚1~2時間はかかる。(四コマでね。)
仕事絵となれば、どうしてもそれ以上はかかるだろう。
しかも、細かい指示があるわけではないので、アイディアから練らなければならないのだ。
とにもかくにも、指示通りの解像度、ピクセル数倍化キャンパスに下書きを始めた。
朝の空気はすがすがしく、窓の外はセミの鳴き声で埋め尽くされている。
パソコンが熱を持つのを防ぐため回した扇風機が、低くうなっている。
作業を始めてしばらく。
いよいよ脳みそが描画モードに入り始めたその時だった。
フィンフォン♪
メールの着信音。
N田さんからの連絡かな?
と思い、受信トレイを開く。
2通入っている。
両方とも出版社からだった。
一通は、書籍に掲載するための取材依頼。
もう一通は、当ブログ「言戯」を、●●●して●●させてほしいというもの。
(詳細は後日。)
「なぬ~!?」
なんで、こうも忙しい時を狙い済ましたかのように来るかな!
しかも、同時にくるとは・・・。
絵も急ぐが取材も気になるし、とにかく返信しないと先方にも迷惑だろうとメールを打つ。
そうしている間に、知り合いやらなにやらのメールがどんどんどんどん・・・
きゃ~~!!
なんでこうも重なるのだ!!?
とにかく次々に迫りくるいろいろにさまざま対処しつつ、超絶集中モード全開で作画に対応に励んだのだった。
・・・そして怒涛のような3日間が過ぎた。
気がつけば、目の前のパソコンには最後の一枚が完成している。
とりわけ急いだわけでもなく、しっかり食べてしっかり寝て、しっかりブログの更新までこなし、
4日という製作期間を一日余して完成。
我ながら、
(ようやるわ…)
と感心したことは言うまでもない。
できた品物データをさっそく担当のN田様、T様にメール添付にて発送する。
インターネットの普及は、本当に絵描きにとってありがたいことばかりだとしみじみ思う。
資料集めにも大いに役立つし、住む地域に関係なく平等に発表の場を与えられ、評価してくれる人がいて、宮城の山奥にいても、こうして首都圏の仕事がもらえ、一瞬で発送もできる。
本当にありがたい時代に生まれたと思った。
今回の品物(イラスト)は、もちろん現段階でのありったけをぶつけたが、やはり描いているうちに上達する部分もあり、それが初期(といっても数枚前のものだが)の絵に不安を覚えさせることもある。
技術というものはすべからく、
「これでいい」ということはないのだろう。
そんなこんなで
どうなることかと思ってたのですが、つい先日N田様より
「クライアントより『問題なし』の答えが来ました!一発OKです!」
という連絡をいただいた。
なんと、リテイクなしでの一発納品。
ほっと一安心がにじみ消え、かわりに湧き上がる「獲った!」という充実感。
尽力いただいたN田様、T様には、ひたすら大感謝です。
ありがとうございました。
とっちらかった、混沌の数日間も終わってみれば面白き日々。
またひとつ。
自分の周りが少しずつ賑やかになってきました。
これからまだまだ色々と面白いことが起きてくるような気がします。
「おもしろきこともなき世をおもしろく」。
これからも、淡々と描き続けますので、皆様、どうかひとつ。
よろしくお願いいたします。