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ラーメン・ラビリンス(支那そばの迷宮)

「オレ、塩ラーメン。」

席に着くか着かないかの間。
メニューをチラリと見て、さっさと注文を決めた。

「早!っていうか、いっつも塩だよねえ。」

相方は半分あきれながら、自分の食べるものを決めるべく、
メニューを睨みつける作業に入った。
 
 
夕餉の時間をだいぶ過ぎた国道沿いのラーメン屋さんは、
マンガをおかずにラーメンをすするスーツさんと、
ひたすらパチンコの話しを繰り返す若者たちくらいなもので、
店内の湯気もややナリを潜めている。
 
 
 
周囲の様子を一通り眺め終えると、お冷に口をつけた。
やや上目遣いに相方の様子を探る。

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まだ、自分のオンリーワンを決めかねているようだ。

最近気づいたことなのだけれど、
飲食店における発注時の相方は、非常に思慮深く、慎重であり、
妥協を許さない。

自らの気分、体調、士気、所持金、好物、意外性、
同伴者多重発注回避、天候、時刻、季節、
気温、湿度などなどを逐一計算し、
多角的かつ総合的にもっとも適した品目を注文しようとしている。

頬杖をついて、低いうなり声を発し、眉間を曇らせている。
知らない人が見たら、具合が悪いのかと心配になることだろう。

しばらく黙ってその様子を眺めていたが、
そろそろ飽きてきたので、提案がてら声をかける。

「そういやあ、こないだ『次は塩にしよう。』って言ってたよねえ。」

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スルー。

残念なことに、私の声は相方に届いていないらしい。
彼女の意識は、今、この瞬間の己に最も合致したラーメンを選択することで満たされているのだ。
 
 
 
数分が経った。
席の向こうでは、相変わらず相方が唸っている。

いよいよ思考は熱を帯び始めたらしく、
メガネをはずして頭を抱えている。

テーブルの上には気まずい沈黙。
知らない人が見たら、別れ話をしているようにも見えるだろう。

しかし誤解しないでほしい。
彼女はラーメンで悩んでいる。
 
 
 
どうやら、候補はトンコツとタンタンメンに絞られ、
情勢としてはややトンコツが有利のようだが、
まだまだ予断は許さない状況。

無言でお手拭をいじくっていた私も、
久しぶりに相方の唸り声以外の声が聞きたくなって、
再び呼びかけを試みた。

「サチ!もう、これでいいんじゃねえ?『お子様セット』!ははは。」

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…非常に残念な結果となった。

出来れば、さっさとメニューを決めて、かまってほしい。
さもなくば、寂しくて死んじゃう。
 
 
 
その時。
相方がガバッと顔を上げた。

その表情には未だ迷いの澱みが残っているが、
ようやく何らかの折り合いがついたようだった。

「よし…うん。決めた!タンタンメンにする。」

悩みに悩んだ結果が、いつものタンタンメンである。

いつも、非常に悩む割りに、
最終的にはほぼ同じメニューだったりする。

直感発注型の私としては、
(一体、何を毎回悩んでいるのだろう…?)
と不思議でならないのだが、
もしかすると相方は、
「選択出来る」という贅沢を存分に楽しんでいるのかも知れない。

そして、食べ始めてからの決まり文句

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というのも、後悔すら賞味しているのかも知れない。

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